越前 リョーマ




正直言って・・・・・・・・・ちょっと落ち込んでる
約束が果たされなかったことにじゃなくて
風邪ひいてるのにも気付かなかった、自分に――――――
「・・・・・・大丈夫?」
そんなワケないのに、なんて言ったらいいのかわからない
「うん―――――ごめんね、誕生日なのに・・・・・・」
布団の隙間から覗かせた瞳は悲しげに潤んでいて、
そんなコト気にする必要ないのに
「誕生日なんか一年に一回は必ず来るものだし―――――」
気にしないで、と伝えたいのに上手くいかない
悲しませたくないし、辛い思いもさせたくない
ずっと笑っててくれたらいい、なんて思うのに
やっぱり、いつも上手くいかなくて―――――――――
「あ、プレゼントあるんだよ」
そう言って立ち上がろうとした手を引きとめて、
「大人しく寝てなよ」
と言うと、またその瞳が悲しげに伏せられた
やっぱり、いつも上手くいかない―――――――――
「・・・・・・・・・手、握ってていい?」
熱のせいで潤んだ瞳がゆるく見上げてくるから
「――――――いいよ」
早く治ってほしいと思うのに、
いつまでもこの瞬間が続いてほしい・・・・・・・・・とも、思う
すこし熱い手のひらを握り返すと、微かに浮かべたキレイな笑顔に
俺がこんなに幸せになってるなんて、気付いてないでしょ?




プレゼントなんていらないよ
その笑顔が、俺にとって最高の誕生日プレゼント―――――――――














千石 清澄






「どこ行くの?」
笑ってたずねるキミを笑顔で誤魔化して
ひたすら目的地へと歩く
キミなら喜んでくれると思うんだ
「―――――着いたよ」
人の気配のしない古びた教会の前に立つ、大きなクリスマスツリー
一番にキミに見せたかったんだ
「きれい・・・・・・・・・」
不意に呟かれたその声に、俺の笑みはもっと深くなる
今まで――――――恋に恋したことなら、たくさんあった
いつだって、大切なダレかを大切にする甘いユメを見てた
だけど、去年のクリスマスこのツリーに祈ったんだ
俺だけの、大切な『ダレか』をください・・・・・・・・・って
俺にキミをくれたのは、神様かサンタクロースか、知らないけど
「大切にするよ―――――――――」
キミだけが、俺の大切な宝物
「どうしたの、急に」
頬を赤く染めてキミが笑うから、俺はいつも・・・少し調子に乗ってしまう
「ツリーに誓ったんだ」
キミがいつまでも俺のそばに居てくれますように――――――
「次に来る時は、二人で――――――」
キミはうなずいてくれるかな?
急に不安になるけど――――――――――


「・・・・・・・・・教会の中で、神様に誓おう?」
――――――――――うなずいてくれるかな?













跡部 景吾




「さ、寒い・・・・・・」
屋上に出た途端、吹きつけた冷たい風に反射的に体が縮こまった
「冬だからな、当たり前だろ」
その素っ気ない言葉に、私が振り向いた瞬間
肩に暖かい重みがかかった
「?」
「やるよ」
見てみると、肩からかけられていたのは電気毛布で
「クリスマスだしな」
意地悪っぽく笑うクセに、その瞳はやけに優しくて
「あ、ありがと・・・・・・」
私はどうしていいかわからなくなった
「お前、寒がりだからな」
俺が居ない時はそれでもかぶっとけよ、と言って景吾が笑った
次の瞬間、肩からかけられていた毛布が外されて
「ちょっと―――――――」
寒いんだけど、と続けようとした言葉を遮って
「俺が居る時は―――――――」
もったいぶるみたいに一言一言区切って言うから
「俺でいいだろ?」
聞こえないフリもできなかった
「・・・・・・・・・・・・」
景吾の目を見ていられなくて、うつむいたら
いつの間にか抱きしめられていて
「寒くなったら、すぐ俺の所に来いよ―――――暖めてやるから」




風は変わらず冷たいのに
心がポカポカする冬の日でした














鳳 長太郎




「先輩・・・・・・・・・大丈夫ですか?」
厚手のコートを羽織って
大きなマフラーをぐるぐる巻きにしている横顔に声をかけると
「大丈夫、大丈夫」
いつも通りの返事が返ってくるけど、
人一倍寒がりな先輩を知っているから
俺には強がっているようにしか見えません
「どこか店にでも入りますか?」
俺が、丁度目に入った喫茶店を見ながら言うと
「だめ!ここがベストポジションなの!」
先輩はポケットから取り出したホッカイロを必死に握りしめながら言った
デジタル時計がかかったビルの前に置かれた、大きなクリスマスツリー
俺が、クリスマスの午前0時にキレイにライトアップされるそれを
先輩と見たいなんて、こぼしたのはいつのことだっただろう
無理だろうな、って諦めていたから
今日、電話で誘われた時は本当に本当に、嬉しかったんです
だから、それだけでもう十分だから・・・無理しないでください
「別に・・・・・・・チョタのためとかじゃないんだからね」
私が見たくて来てるだけだから、と小さく呟かれた声に
突然大きな歓声が重なった
見上げてみると、デジタル時計は0時を回り
ツリーは白い輝きで包まれていた
「・・・・・・・・・キレイですね」
俺の言葉に
「でしょ?」
満足気に笑う先輩は、まるで天使みたいで
俺は思わずその小さな体を抱き寄せた
わかりにくいけど、気付けた時には心に優しい火が灯る
そんな先輩の優しさが、俺は好きです
天使みたいにキレイな心を持った先輩に
いつまでも想っていてもらえるような自分でいられますように―――――













忍足 侑士




クシュッ――――――
「寒いん?」
ほっぺたと鼻の頭を赤くして両手を擦り合わせとるお姫さんに聞くと
「ん?大丈夫だよ」
ほら、いつも通り・・・・・・ちっとも素直に答えてくれへんから
「俺は寒いんやけどなぁ・・・・・・」
ちょっと淋しい気持ちになる
「他のトコ行く?」
お姫さんが少し首をかしげると、髪の毛もサラサラ揺れて
それだけでこんなに切なくなるんは、俺だけやろか?
「わかってへんな」
『寒いんやけど』は『抱きしめてもええ?』っちゅう意味なんやで?
「?」
俺の言葉に、お姫さんがまた首をかしげるから
「俺の両腕は、お姫さんを暖めるためにあるんやで?」
寒いなら、寒いて素直に言ってくれたらええ
俺と居るのに、無理とか我慢とかせんでええ
「せやから――――――暖めさせてくれへんか?」
お姫さんの背中に手を回して、キュッと抱きしめると
お姫さんが「侑士って、寒がりだったんだね」なんて言って笑うから
「わかってへんな・・・・・・・・」
堪え切れへんため息が上ってくる
せやけど
「寒い時は、私が暖めてあげるね」
得意気に笑うお姫さんの顔に、それでもええか、なんて思い直して
「せやな、お願いするわ」
そう言うと、お姫さんは「任せて」と言って笑った
そんな安請け合いして・・・・・・知らんで、どうなっても?
とりあえず、冬のデートは全部屋外で決定やな




――――――――――やっぱ冬ってええな